生活の質とうつ病におけるヒト腸内細菌叢の神経活性の可能性

The neuroactive potential of the human gut microbiota in quality of life and depression

腸内細菌の代謝とメンタルヘルスとの関係は、マイクロバイオーム研究において最も興味深く、かつ議論を呼ぶテーマの一つである。微生物叢-腸-脳のコミュニケーションについての研究は、ほとんどが動物モデルを用いた研究であり、ヒトでの研究は遅れている。大規模なメタゲノミクス研究は、トランスレーショナルプロセスを促進する可能性があるが、微生物の神経活性ポテンシャルを研究するための専用のリファレンスデータベースやツールがないため、その解釈が妨げられている。本研究では、大規模なマイクロバイオーム集団コホート(Flemish Gut Flora Project, n = 1,054)を調査し、独立したデータセット(n = 1,070: total)を検証し、マイクロバイオームの特徴が宿主の生活の質やうつ病とどのように相関するかを研究した。酪酸を産生するFaecalibacterium菌とCoprococcus菌は、一貫してQOL指標の向上と関連していた。また、Dialister属細菌とともに、Coprococcus属細菌は、抗うつ薬の交絡効果を補正しても、うつ病では枯渇していた。モジュールベースの解析フレームワークを用いて、シークエンスされた腸内原核生物の神経活性ポテンシャルのカタログを組み立てた。糞便メタゲノムの腸-脳モジュール解析では、ドーパミン代謝物である3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸の微生物による合成能が精神的な生活の質と正の相関があることが確認され、うつ病における微生物のγ-アミノ酪酸生成の役割の可能性が示された。今回の結果は、交絡因子の重要性を強調しつつ、マイクロバイオームとメンタルヘルスとの関連性を示す集団規模の証拠となった。

 

著者名

Mireia Valles-Colomer, Gwen Falony, Youssef Darzi, Ettje F Tigchelaar, Jun Wang, Raul Y Tito, Carmen Schiweck, Alexander Kurilshikov, Marie Joossens, Cisca Wijmenga, Stephan Claes, Lukas Van Oudenhove, Alexandra Zhernakova, Sara Vieira-Silva, Jeroen Raes

文献名

Nat Microbiol. 2019 Apr;4(4):623-632.

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32567509/ 

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