肥満・過体重のヒトボランティアに対するAkkermansia muciniphilaの補給:概念実証的探索的研究

Supplementation with Akkermansia muciniphila in overweight and obese human volunteers: a proof-of-concept exploratory study

 メタボリックシンドロームは、心血管疾患や2型糖尿病のリスクの増加といったいくつかの合併症によって特徴付けられる。腸内細菌叢は、肥満関連疾患の発症に関与するとして新たに着目されている。ヒトにおいて、Akkermansia muciniphilaの多さと過体重、肥満、未治療の2型糖尿病や高血圧との間に負の相関関係があることが示されている。一方A.muciniphilaの投与はヒトでは検討されていないため、過体重・肥満患者でインスリン抵抗性のボランティア32名を対象とした試験を実施した。主要評価項目は、安全性、忍容性、代謝パラメータ(インスリン抵抗性、血中脂質、内臓脂肪率、体重)である。副次的な調査として、腸管バリア機能(血漿リポ多糖類)と腸内細菌叢の組成も確認された。この試験では、1010個のA. muciniphila菌を生きたまま、または低温殺菌したものを3ヶ月間毎日経口摂取し、安全で副作用がないことが実証された。プラセボ群と比較して、低温殺菌したA. muciniphilaはインスリン感受性を改善し(+28.62 ± 7.02%、P = 0.002)、インスリン血症(-34.08 ± 7.12%、P = 0.006)および血漿中総コレステロール(-8.68 ± 2.38%、P = 0.02)を減少させた。また、低温殺菌したA. muciniphilaの投与により、プラセボ群と比較して体重(-2.27±0.92kg、P = 0.091)がわずかに減少し、ベースラインと比較して脂肪量(-1.37±0.82kg、P = 0.092)と股関節周囲長(-2.63±1.14cm、P = 0.091)が減少した。3ヶ月間の摂取後では、A. muciniphilaは肝機能障害と炎症に関連する血液マーカーのレベルを低下させたが、全体的な腸内マイクロバイオーム組成には影響を与えなかった。結論として、A. muciniphilaの補給は安全で副作用がなく、いくつかの代謝パラメータを改善することが示された。

 

著者名

Clara Depommier , Amandine Everard , Céline Druart , Hubert Plovier , Matthias Van Hul , Sara Vieira-Silva , Gwen Falony , Jeroen Raes , Dominique Maiter , Nathalie M Delzenne , Marie de Barsy , Audrey Loumaye, Michel P Hermans, Jean-Paul Thissen, Willem M de Vos, Patrice D Cani.

文献名

Nat Med. 2019 Jul;25(7):1096-1103.

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32567509/ 

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