ヒト腸内細菌叢のGABA調節菌

GABA-modulating bacteria of the human gut microbiota

腸内細菌叢は、免疫反応や神経系など、多くの重要な宿主機能に影響を与えている。しかし、腸内細菌叢の多様な微生物の培養はかなり進んでいるが、ヒトの腸内に存在する23〜65%の種は未培養のままであり、その生物学的役割を理解する上で障害となっている。このような未培養の理由として考えられるのは、人工培地には近隣の細菌がその場で提供する重要な増殖因子が存在しないことである。本研究では、共培養により、Bacteroides fragilisの存在を必要とするKLE1738を分離した。B. fragilisの上澄み液をバイオアッセイにより精製したところ、増殖因子が分離された。驚くべきことに、この増殖因子は主要な抑制性神経伝達物質であるGABA(γ-aminobutyric acid)であった。GABAは、KLE1738の成長をサポートする唯一の栄養素であり、ゲノム解析によりGABA依存の代謝メカニズムが裏付けられたのである。KLE1738の生育を指標に、さまざまなGABA産生菌を分離したところ、Bacteroides ssp.が大量のGABAを産生することがわかった。ヒトの腸内細菌叢をゲノムベースで代謝モデリングしたところ、GABAを産生・消費する能力を持つと予測される属が複数存在した。健康な人の便サンプルのトランスクリプトーム解析から、GABA産生経路がBacteroides属、Parabacteroides属、Escherichia属で活発に発現していることがわかった。さらに、GABAを介した反応が変化する大うつ病患者を対象に、16SリボシュマルRNAシーケンシングと機能的磁気共鳴画像を組み合わせることで、糞便中のバクテロイデスの相対的な存在量が、うつ病に関連する脳のサインと負の相関関係にあることを明らかにした。

 

著者名

Philip Strandwitz, Ki Hyun Kim, Darya Terekhova, Joanne K. Liu, Anukriti Sharma, Jennifer Levering, Daniel McDonald, David Dietrich, Timothy R. Ramadhar, Asama Lekbua, Nader Mroue, Conor Liston, Eric J. Stewart, Marc J. Dubin, Karsten Zengler, Rob Knight, Jack A. Gilbert, Jon Clardy & Kim Lewis

文献名

Nat Microbiol. 2019 Mar;4(3): 396-403. p>

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32567509/ 

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